児 童 演 奏
                              
 カート・ヴォネガット・ジュニアの小説に「プレイヤー・ピ
アノ」という作品があったが、自動演奏するピアノが喫茶店に
置かれていることがある。
 MTGの二階のピアノは怒涛留の店員の人が毎朝、演奏デー
タのディスクをセットして演奏させる。このピアノ、すこぶる機嫌
が悪い。原因は概ね機械に弱い婦女子のこと、ディスクの読み
取り部分を油脂のついた指で触ったか、操作ボタンを押し間違
えているか、そもそも電源が入っていないからだと推測される。
 今朝は笑った。曲のイントロ部分しか弾かない。これじゃあ
クイズドレミファドンだね。何度セットしても、途中で演奏を
中止する。眼が合ってしまった店員は照れ笑いをしていた。
「やはり、本物の人間が弾かないとな…………」
とポツリと言い残し、その場をあとにした。やな客だね。

 横浜そごう店内の喫茶店では、クラシックのピアノ曲を人間
の奏者による手動演奏と、プログラムによる自動演奏とを三十
分交代で行う。
 先日、習っているので、少なくとも俺よりピアノが上手なウ
チのガキも一緒に来ていたので、あるいたずらを実行した。
 自動演奏の際、鍵盤の前であたかも実際に弾いているかのよ
うなフリをすることを命じた。小学四年生ともなると落語も聞
くし駄洒落も考える。すぐに意図を理解した。外見はとてもピ
アノなんて弾けそうには見えないワルガキ。なのに演奏は寸分
のミスもない完璧さ。(あたりまえ)
 上の階からエスカレーターで下降してくるデパートの客、デ
ート中のカップルやオバサンたちの表情。これは爆笑モノ。人
は驚いたときに本当に眼が丸くなるのですね。これって、どっ
きりカメラっていうんですか? やな親子だね。



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