実 は 出 る 部 屋
                             
 もう、その老朽化したビルは取り壊されたので、その部屋
はすでに存在しない。
 そのビルはある団体がまるごと使用していたが、なぜか最
上階の部屋だけはどの部署も使用していなかった。
 半年間たった一人で、俺はその部屋に設置されたパソコン
で作表などをしていた。出来上がったら下のフロアへ行って、
担当者の机に届けるだけで殆ど人と顔を合わせることのない
仕事だった。実に充実した任務はやがて完了の日を迎えた。
 送別会ということで、スタッフの方々がランチをご馳走し
てくれることになった。
「○○さん、これまであんな部屋で一人離れて仕事をしても
らってすいませんでした」
「いえいえ、集中して仕事ができました。とても静かで眺め
もよく、最高の環境でしたよ」
「何か変わったこととかはありませんでしたか?」
「変わったことって例えばどんなことですか?」
「なければ別にいいんですよ………。(^_^;)」
「そういえば来たばかりの頃、やはり同じような質問を受け
た記憶があります。そして、その人は時々、心配そうに私の
様子を見に来ていましたね」
「ああ、やっぱり」
「何かあるんですか? あの部屋」
「いや、最後の日だから言いますけどね、実はあの部屋出る
らしいんですよ」
「幽霊とか?」
「ええ、前の人はそれで、任務途中で急にやめてしまって…
………」
「で、私が呼ばれたと」
 そういうことは最初に言ってよぉ~~~~~っ!


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