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これは実話である。
「もしもしぃ、○○さん出してください」
こりゃまた、いきなり用件から入ってきた怒っている中年女性の声だよ。
「何番におかけですか?」
「あんただれよぉ?」
「電話で知らない人から、あんただれっていきなりいわれて、
名のるほどのものではございません。再度お尋ねします。
何番におかけですか?」
「何番だっていいじゃないよぉ。
いいから○○さん出してください。(きっぱり)」
「そうおっしゃられましても、ここには、私一人しかおりません。
しかも、この番号は外部に公開しておりません。
したがって、あなたがおかけになった電話番号は
現在使われておりますが、間違っています」
「何言ってんだかよくわかんないわねぇ、まったくぅ。
いいから○○さん出してください」
ここで、ガチャンと切ってもよいのだが、
こういう人は、すぐリダイヤルしてくるだろう。説得するしかないか……。
「わかりました。その○○さんを出してもよろしいのですが、
その○○さんにどのようなご用件がおありなのでしょうか。
差し支えなければ、お聞かせ願えないでしょうか」
「やっぱり、いるのね。金返してよぉ。はやくぅ」
ぉゃぉゃ………。
「あのぉ、私は人様からお金を借りた経験は
生まれてこのかたありませんが」
「あんたじゃないの。○○さん。となりにいるんでしょ」
「見えるんですかぁ? そこから」(一応、ボケてみる。)
「いるんなら、はやく代わってよぉ」(ボケが通じていない。)
「どういう状況で、あなたは○○さんにお金を貸したのですか。
差し支えなければ、お聞かせ願えないでしょうか」
「それがね、その人昨日うちの店で飲んだあげくに財布忘れたっていうの。
そんで、飲み代とタクシー代って、あたしから5万借りてったのよん。
置いていった名刺みて電話かけているんだけどぉ」
「ほほう。5万ですか……。その名刺にはなんと印刷されていますか。
差し支えなければ、お聞かせ願えないでしょうか」
「○○○・デ・○○○○○。番号は、×××-××××」
「ほほう。やられましたね」
「え、何が?」
「○○○・デ・○○○○○といえば、
ネコでも知っている有名ファッションブランド。
そこの社員として相手を十分に信用させ、
さんざん飲み食いした挙句に財布を忘れたことに気づく。
おまけに、タクシー代まで上乗せし、
置いていった名刺には、無関係の事務所の電話番号。
完璧です!!」(って、おれは名探偵コナンかぁ?)
「えっ、まさかぁ」
「その、まさかです」
「えええっ、やっぱり…………。(へなへなへな)」
「おそらく、104でその会社の正しい電話番号を
お調べになって電話されたとしても、
そのような名前の社員は、現在も過去にもおりません。
といわれるのがオチでしょうな。100%」
「そ、そ、そ、そ、そんなぁ。私はどうすればいいんでしょうか」
「たいへんお気の毒ですが、私があなたにしてあげられる唯一のことは、
簡単に知らない人を信用してはいけない。
という事実をお伝えするのみです」
「そうですか………。(吐息)。いい勉強になりました。
先程は、いろいろ失礼なことを申し上げてすいませんでした。
しかも、お仕事中でお忙しいところ、
見ず知らずのわたしにいろいろと教えてくださって、
なんと、お礼を申し上げてよいやら…………」
「いえいえ、お気になさらないでください。
そして、今後は、そのような安易な手口に引っかからないよう
くれぐれも注意してください」
「わかりました。ありがとうございました」
電話は終わった。
でも、そんなに簡単に知らない人を信用してしまっていいのだろうか。
万が一、私がその犯人の共犯者だったとしたら…………。
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