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たいくつな電車の中でもだいじょうぶ。どこでも読める短めコラム
人間として最高!もくじ

Bolsey B2

薄暗い雑居ビルの地下2階。

仕事の合間に、ぶらりと中古カメラ屋に立ち寄ったことにより、それは始まる。
興味が無い人間は決して足を踏み入れることのない隠れ家的な店構えだ。

25年間、俺はカメラのことを忘れていた。
カメラマンのアシスタント、美大の授業、
そしてグラフィックデザイナーとしての10年間、
あくまで俺にとってのカメラは、写真撮影の道具でしかなかった。

ところが、その中古カメラ屋でそのカメラに出会った瞬間、
俺の中でカメラに対するあたらしい概念が構築された。

「あのぉ、このボルセイとかいうの見せてください」
「ボルシー…(微妙な間)…、ですね」
銀縁のメガネをかけた神経質そうな店員はカメラの名称を訂正した。
「そう、そのボルシーというのを」

そのカメラは、まるで海苔をつけた大きめのオニギリのような形だった。
これまでクラッシックカメラに全く興味はなかった。
蛇腹があって、黒い布を頭にかぶって撮影するもの
という漠然としたイメージしかなかった。
いきなり買うのはためらわれた。

「手にとってみていいですか」
「どうぞ」
「レンズの状態はどうなんでしょう」
「この程度の拭きキズなら順光で撮影するぶんには問題がないといえます」
「国はどこですか。いつ頃のものですか」
「少々お待ちを」

店員は、店の奥に行き、手垢にまみれた洋書を引っ張り出してきて答えた。
「1949年。アメリカです」
「そうですか。その本をください」
「これは売り物ではありません」
「せめて書名だけでも教えてください」
「ブルーブックです」
「ありがとう。また寄ります」

俺は、店の外にでるなりモバイル端末から
アマゾンでワンクリックしてその本を購入した。

帰宅後、この中古カメラ屋のサイトからそのBolsey B2を購入した。

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