98万円のコート

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98万円のコート

マトリックスの主人公が着ているような黒い皮のロングコードを売っていた。

でも、値段が……。

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￥980,000._

って、なんだよ！いま乗っている中古車(車両価格17万円)を5台買えて、おつりが来るんですけど……。

でも、一応、冷やかし半分で試着してみた。

やっぱり、スゴイ気に入ってしまった。

こうなったら、値引き交渉だ。

「もっと安くなりませんか？」
「わたしアルバイトなので、本店に電話して聞いてみます」

下がりました（笑）。

「￥98,000の間違いでした」

って、あんた、俺が値切らなきゃ98万円で売ってたのかよ!!!

で、さらに粘る。

「でもな～、この前、給料下げられたばかりだしな～」（実話）
「ん～、見なかったことにして、ここはやめとくべきだろうな～」
「でもな～、この見てしまったという記憶を消去するにはどうしたらいいものかな～」
「ん～、いま特に欲しい物っていっても特にないしな～。買おうかな～」と小さな声でブツブツ言いながら、穴があくほど値札を凝視すること３分以上。

「あの～、実は～、雨の日だと～、半額セールやるんですけど……」

って、あんた、俺が買うのを逡巡するフリをしていなかったら、定価で売ってたのかよ!!!

「じゃあ、また雨の日に来ます。定価じゃ、たぶん誰も買わないだろうから……」と、ぼそっと余計なことをいって店を出る嫌みな客。

それから１週間、全く雨が降らず、店に行けない。

やっと雨が降っても、店の営業時間内に行けない。

２週間後、ようやく雨の日に再来店し、￥48,000で購入。

長い道のりでした。

「てっきり、もう来ないのかなって、思っちゃいましたよ」

だから、定価じゃ誰も買わないよっていったのに……。

はなから￥48,000で売っていたものかもしれないけれど、苦難を乗り越えてやっと手に入れることができた。

98万円で即決しなくてよかった～。アブネェ～。